第11章 弓を引き 雫を穿つ
後ろから叫び声が消えた
おそらく気絶したか
それでも刀は固く抱えている
というより背中に乗る体との間に刀を挟んでいるせいか背中が痛い
しばらく走ると少し開けたところに着いた
鬼から襲撃された後が強く残る
ただここは鬼が斬られた跡もある
もしかしたらもう蜜璃さんが里に着いたのかもしれない
周りには刀鍛冶さんが沢山いた
烏について行かせた方もここにいる
よかった 無事に逃げきれたみたい
「錦殿!ご無事でよかったです
あれ!? こいつがすみませんでした!」
「いえいえ二人共ご無事でよかったです
この方は必死に刀を守ろうとしていて...」
「おい!起きろ!大丈夫か!!」
いや、起こしかたね
気絶した人を起こすのに殴り飛ばすとか...
しかも怪我人...
「っは!! すいません!気を失ってました!
よかった皆さんご無事でしたか
鬼殺隊の方...本当にありがとうございました!」
手が震えている
さっき渡した布はしっかりと巻かれてはいるものの
血が滲んでいた
「私は錦と言います
厚かましい限りなのですが、その中で一番軽い刀はありますか?」
「あ...っと これです!打っただけ刀ですので色は変化していません!何百年も前に作られましたが斬れ味は保証します!」
今使っている刀よりも若干長めに感じる
しかし圧倒的な違いは刀の重さだ
軽い
これなら失った左腕にもちゃんとバランスを取れる
「歴史ある刀のようですので必ずお返し致します!」
「いえ それは錦殿に差し上げます
どうかご武運を!」
刀を包んでいた布を取り
柄を握る
白銀に染まった刀は月明かりに照らされ光々としていた