第11章 弓を引き 雫を穿つ
「時透様 南にいる鍛冶職人を見てきます」
錦が来れないのにはそれなりの理由があるはず
もしかしたらそこにも鬼がいるのかもしれない
「こっちはいいから」
小さく頷く
今感じられる鬼はさっきのような壺の魚の鬼を含めて二十を超えた
どうしようもない不安は目の前にいる鬼を倒すしか方法はない
「ここにいる鬼は全て倒しました!
烏について行って安全な所まで走ってください」
「本当にありがとうございます!」
上弦の鬼なら蜜璃さんも時透様もいるし炭治郎さんも不死川さんもいる
このまま真っ直ぐ進めば錦家に着く
そこから感じるのは鬼の気配
叔父上もいるはずなのに
何故?
理由は簡単だった
林を抜け、錦の家に入る
建物中に広がる濃い血の匂い
脳を駆け巡ったのは三年前の出来事
たった一夜にして大切なものを全て失った
残った怒りの感情に支配されていたのを
やっと取り戻せたというのに
「叔父上! 悠大! 紫璃! 叔母上!」
返事がない
でも誰の姿もない
「紫娜...ここだ...!」