第11章 弓を引き 雫を穿つ
「珠世さんに会う前
一人、鬼化した人が現れましたが
彼は竈門禰豆子のように理性を保っています
珠世さんと共に行動するようです」
少し考えたような顔つきになると
すぐにまた元の通りになり
御館様は微笑んだ
「ありがとう紫娜」
超屋敷に戻るとあの三人組はいなかった
アオイさんに聞くと宇髄さんと一緒に任務に行ったそう
すれ違いだったみたい
これからどうしよう
今日は胡蝶様も任務に向かって不在だ
片腕をなくした状態での刀の扱いは慣れた
夜の呼吸だって十分に発揮出来る
「紫娜さん おかえり!」
無邪気に笑う
珠世さんから鬼化していることを聞いて
幾分か納得できることがあった
一つは傷の治る速さ
もう一つは力の強さ
どちらも普通なら説明がつかなかった
何としてでも椿を守りたい
たとえ完全な鬼になったとしても
ただ、このことを本人に言うべきなのかがわからなかった
太陽の下に出すのも怖い
だからといって"人"の椿を外に出さない訳にはいかない
言わなきゃ
言わないと椿自身が向き合えない
万が一椿が鬼になって人を傷つけたとしても
私は椿を悪役にしたくない