第11章 弓を引き 雫を穿つ
「柱達は私を必死になって守ろうとするが
君は本家への執着がない分、柱達にできないことをして欲しい」
「柱達にできないこと...」
「この代で鬼舞辻無惨を倒す
そのため 君に私の使いになって欲しい
本家に執着がない紫娜だからこそ頼めるんだ
やってくれるかい?」
椿と共に生きる条件としては
思っていたのと違い少し驚いた
確かに柱は御館様の話になると少々冷静さがかける
柱の境遇を知らない私にとってはどうしても他人事になってしまう
「私は自分のため、人ために生きます
確かに私は他の柱の方よりも執着はありませんが
決して蔑ろに考えているわけではありません
御館様の命とあらば
私は御館様の目となり手となります
ただ私は御館様にも生きて欲しいと存じます」
この代で鬼舞辻無惨を倒す
そう言い切った御館様だからこそ
今の状態に焦っておられる気もした
産屋敷に向かっている時
椿が鬼になる日が来るかもしれないということをずっと考えていた
隣を歩く小さな命を守る使命と責任
のしかかった物の大きさは
今まで抱えてきたものよりもはるかに大きく感じる
椿に幸せを見つけられるように生きて欲しい
こう願っているだけなのに
どうして簡単にいかないんだろう
「ありがとう紫娜 もしその時がきたら烏を送るよ」
「ご報告がもう一つあります」