第11章 弓を引き 雫を穿つ
「紫娜、御苦労だったね
珠世さんと出会ってどうだったかい」
1週間前と変わらず顔色が悪く
体中に痣が拡がっているのか、包帯の巻いているようだ
御館様は私に何をして欲しかったんだろうって
珠世さんに会うまではずっと考えていたけど
珠世さんに会ったおかげで、
正式には珠世さんがきっかけとなり様々な人のおかげで、自分自身と決着をつけることは出来た
「私は生きることに覚悟を決めることが出来ました
やっと自分と向き合えました」
全てを見越して珠世さんと会えと仰ったのなら本当に尊敬に値する
「ただ、決着をつけるとともに
生きる理由が一つ出来ました」
御館様が優しく耳を傾けてくれる
でも、表情は辛そう
「私と共にしている子はいずれ鬼になります
しかし彼女は人と言いきれずとも鬼とも言えない狭間にいます
あの子と生きるたい
もう後悔しないために
どうか彼女と共にいることをお許しください」
表情からは感情を読み取れない
珠世さんから椿も預かるかどうかを聞かれた
本当ならそれがいいのかもしれない
けど、このことは当の本人も知らない
珠世さんと愈史郎さん、御館様と私だけが
この事実を知っていることになる
私の家族は崩れてしまった
だから
今度は救いたい
弟も妹も
「君にとって大切な子なら
私にとっても大切な子供だ
ただし条件がある」
条件?