第10章 鬼と花
「珠世さん
心が
繋いでいてくれたんです
ぼろぼろになってまで
私でいさせてくださったんです」
今までずっと話しかけてきた私の心が
もう何も言わなくなった
これで最後なのかもしれない
ずっとあなたを呪いと呼んでいたけど
呪いという名の心がずっと助けてくれていた
「もし...紫遊佐が...人の道を選んだら
人として生きることを許されたら
紫遊佐と...生きれるように
私たちを助けてください」
微笑んだ珠世さんは
やっぱり母上に似ている
「ええ、その時は必ず助けましょう」
珠世さんの微笑みにつられて笑ったはずなのに
氷嚢で冷えた頬には熱いものが流れていた
もしも今、魘夢の血鬼術により
何者かが紫娜の夢に入れば
切り裂いた空間に広がる景色に絶句するだろう
とても美しい夕焼け
銀の糸で紡いだような光には真っ赤な花弁が咲き乱れ、近くには竹林がざわめいている
美しい夕焼けには雲ひとつないが銀色の雨が降っていた
銀色の雨はじんわりと体に溶け込み
胸の底で広がるのは暖かさと優しさだった
小さな少女が両手をあげて笑顔で迎えている