第10章 鬼と花
「私は鬼ですが自分の体を弄り、
鬼舞辻の呪いから外れることが出来ました
愈史郎は私が鬼にしたのです
私たちは少量の血を飲むだけで生きられます」
御館様が会って欲しいって仰ったのはこれが理由?
鬼だったけど少量の血で生きられる...
紫遊佐も...助けられるのかな
違う
紫遊佐は自分で道を選んだ
私が助けると言ったら
それはただの自己満足だ
「珠世さんは何故呪いから外れたのですか」
鬼への偏見から生まれたこの疑問が口から出た時後悔した
珠世さんはとても悲しそうな顔をした
深い紫の色をした瞳には
ただ後悔と憎しみが伝わる
「私が今なお生きるのも
全ては鬼舞辻無惨を倒すためです」
この執念のようなものは
胡蝶様からも感じられた
鬼舞辻無惨に大切なものを奪われたことから生まれた執念
「私も鬼舞辻無惨を恨んでいます
ただここまで強くなれたのは
弟を殺し、自分も死ぬためです」
胡蝶様の言葉で
煉獄さんの言葉で
蜜璃さんの言葉で
生きたいと願えた
私はもうそれで充分だ
紫遊佐を好きだったし
生きていて欲しい
ただ何人も殺した罪と
私が紫遊佐を恨んだ数だけ
私は死への願いが強くなったのかもしれない
御館様に宣言してから
何度も気持ちが揺らいだけど
やっぱり変えられない
バシッ
乾いた音が部屋を響き渡る
ジンと痛む頬
驚いたように目を開く愈史郎さん
どうしたら良かったの?