第10章 鬼と花
近くにあった藤の家に行きお風呂で温まったらもう夜
になっていた
このままだと数週間は帰れないかもしれない
というよりも
任務自体が大雑把すぎて珠世さんに会ったあと
どうすればいいのかすら知らされていないから
なんかもうよく分からない
敷かれた布団にすやすやと眠る椿の頬を撫でる
最初に出会った時の顔の痣はすでに消えていた
外に出てみた
御館様が言うほどの方だからそれほどの方なんだろう
あんなに激しく降っていた雨はやんでいて
それでもなお人混みは冷めない
水溜まりを避けながらも
賑やかな人達や街路灯は華やかさ街を彩っていた
煙を吐き、人を乗せて動く車にはもう見慣れたもの
日本らしさは根強く残っている
ふと鼻を掠めたのは
濃い血の匂いだった
少し離れた所から聞こえた悲鳴は
恐怖を物語る
逃げ惑う人の波をかき分けて
少し見えたのは鬼の姿をした男性だった
良くは見えないけど
まだ誰も喰われていない
近くに鬼舞辻らしき人はいないけど
人の混乱が恐怖の連鎖を招いていた
鬼は誰も喰べていないおかげで簡単に押さえられた
けどこのまま騒ぎを聞きつけた警察なんかに廃刀令で捕まる訳には行かない
生きるためには食は必要だ
それは鬼も同じ
なぜ許せないかは
命を玩具にするから
この人はなら間に合う