第10章 鬼と花
蝶屋敷を出てから一週間がすぎた
近くにある藤の花の家紋の家を転々としながら
珠世さん?を探すがなかなか見つからない
そりゃ御館様が仰った任務だからさぞ大変だろうとは覚悟したけど
帰れる気がしない
底が見えないような任務に、すぐ悲鳴をあげると思っていたが、椿は普通に、むしろ慣れいるかのように根強く手伝ってくれている
雨が強く降っている中でも人混みは絶えない
探せと言われてこんなに手探りになるとは思わなかった
急に左の袖が軽くなるのを感じた
「椿?!」
人混みに流され椿を見失う
左の袖は少し暖かいが
一般の大人の腰あたりの身長は見渡して見つけられるものじゃない
人をかき分けて波に逆らう
周りの人は少し都会なせいか
モダンな格好をした貴婦人や紳士がせかせかと歩いている
「すいません!女の子を見ませんでしたか?!」
大抵の人は無視をするか、汚らしいような目でこっちを見ては唾を吐くか
身振りだけが偉そうでちくちくムカつく
家と家の隙間で何とか人混みを免れた
けど椿とはぐれてしまい不安が煽る
ここで椿の名前をきっと呼んでも探せない
「Hey!Miss!
Please come here!」
最近西欧の方がよく見受けられる
話しかけられたのは錦家にいた時以来だった