第10章 鬼と花
部屋に戻るととっくの昔に蜜璃さんと椿は帰ってきていて、椿はもう寝ていた
「紫娜ちゃんどこ行ってたの?
椿ちゃん寝ちゃったわよ?」
蜜璃さんを真ん中に三つに並べられた布団は
寝相というものを少し恐怖に感じる
改めて横に寝ると少し懐かしいような嬉しいような
「私ねぇしのぶちゃんから紫娜ちゃんの話聞いちゃったの
いたずらに聞こうと思ったわけではないのよ?
でもやっぱり本人に聞くべきだったわ...」
何をこんなに悪びれているのだろう
蜜璃さんなら知られて困ることはなにもないのに
「何を聞いたんですか?」
「家族のことと椿ちゃんのことを...
私は本当に紫娜ちゃんのことをすごいと思う!
もちろん頑張ってる椿ちゃんの事も
だから私は紫娜ちゃんに死んで欲しくない!」
死にたいって思っても生きたくて
生きることに意味を探して
足掻いて溺れそうでも生きていて
生きることに訳が欲しくて
でも埋まった
誰かに求めていたんだ
生きていいよって言われた気がした
溝内が暖かくなる
目頭も熱くなって
また私は泣いている