第10章 鬼と花
出会った頃より紫娜の匂いは明るくなっていたのにどうしてなんだ
今までで一番悲しい匂いがする
暗くてよく見えないけど声からして少し疲れているように思える
「紫娜...大丈夫か?」
膝を抱えたまま俯いて固まっている
さすがに心配になって腕を掴んだら
右手は袖を握っただけだった
「私は死ねるなら早く死にたいのに
生きなくちゃいけなくて
人は...いざ死にそうになると生きようとするんですね」
俺よりも強い紫娜が片腕をなくすぐらい強い鬼だったんだ
「紫娜はすごいなぁ
俺よりも年下なのに椿ちゃんとかも面倒見ながら
自分にも戦ってるんだな」
見た目ではずっと大人びている紫娜はどこか子供っぽくて弟妹たちと重なる
「死んだら悲しいよ
生きることは義務じゃないけど
生きられるから人を想えるんだ」
顔をあげた紫娜は月明かりで目が潤んでるのがわかった
「私実は炭治郎さんの優しいところは痛くて嫌いです
でもいつも救われます」
「それならよかった」