第9章 自切
「片腕を無くしてしまった」
「富岡さんが謝ることないですよ 私の技術不足です」
結構律儀な方だった
天然な印象だったのに
しばらく沈黙が続く
これ以上話すことはないから話しも切り出せないし、かと言って富岡さんもどう帰ればいいか分からないんだろうな
窓からさしこむ光が暖かい
少し心が不健康なだけで別に外を歩いちゃ行けないって言う決まりはない
「...話すことがなくなっちゃったのでお散歩でもしませんか?」
外は天気の割に寒かった
少し距離を置いて歩く富岡さんと私をはたから見たらそりゃあいかついだろうな
プラプラとする左腕の袖にまだなれない
よくよく考えたらやっぱりまだ外に出ちゃ行けないのかもしれない
「お前は私情がなければ柱になっていたか?」
富岡さんが先に口を開くとは思わなかった
天気はいいのに寒いですねぐらいの軽い話をしようと思ったのに
まあそんなの無視されてそうだけど
「私の家系は元々本部と関わりがなかったので正直興味もないのでならなかったと思います」
でもそのときだったら断れる理由がないから受け入れてたんだろうけど
「そうか」
んー? うーん
終わっちゃったよ話
人の顔色を伺いながら生きてきたから一つ得意なことがある
それは人の瞳を見ること
顔よりも言葉よりも語ってくれる
富岡さんは自分のこと 聞かれたくない気がする
まぁ誰でもそうだよね
「俺の事は聞かないのか?」
聞いて欲しくなさそうだったのは私の勘違い?