第9章 自切
ボタボタっと音を立てる血
上弦の弐がなめずさりをしている
左腕がなくなった余韻で浅くしか刃が通らない
右上から左脇腹まで切りつけただけだった
そしてその傷すらも鬼はすぐに再生してしまうのだ
無くなった左腕は童磨が手にしていた
でも、肉を斬られたことよりも火傷が肉を蝕む痛みからの解放の方が強い
しかし絶えず流れ落ちる血は塞ぎようがない
「こんなに火傷をおっていたんだ...辛かったねぇ痛かったねぇ!ああ、美味しそう!」
「錦!」
スッ
夜の呼吸 終ノ型 十六夜
頸が切れたかは確認できなかったけど
時間は稼げた
富岡さんが左側に来て支えてくれたおかげで何とか神社から出た
あともう少しで日が昇る
この明るさなら鬼は出れまい
倒せなかった
力不足だった
自然と零れる涙
朝日に助けられたのはこれで二度目だ
ふとしたときには紫娜は意識を失っていた