第8章 久しぶり
さらしだけの姿になった
黒いさらしは肌の色と対照的で存在感がある
体が冷えないようにと着物は羽織らせてくれた
胡蝶様のひんやりとした指が背中の傷を触るのがわかる
縫われた糸はすっかり皮膚に馴染んでいた
ただ夢にあの夜のことを思い出すと
この傷の痛みが掠める
「痛みは無いですか?」
「はい 大丈夫です」
「そうですね、感染症もないみたいですしこの傷はもう大丈夫です」
この傷は?
"は"に少し力が入っていた
あれ、ほかにどこか怪我したっけ
「腕、見せてください」
ああ、忘れてた
雑に巻いた手拭いを見られることが恥ずかしい
その手拭いをとるとさっきよりは広がっていないが黒く爛れている部分は増えていた
胡蝶様の顔をこっそり見るとにっこりと笑っている
それだけなら良かった
後ろのどす黒い空気に責められるような気がした
深いため息をついた胡蝶様には怒りを通り越して呆れを感じる
「いつからですか?」
「未明頃だったので半日弱だとおも...い...ます...」
久しぶりに胡蝶様が怖い
「あの...川の水で冷やしたんですが...」
これ以上言うのはよしておこう