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上手に笑えるようになりました【鬼滅の刃】

第8章 久しぶり


小話2______

「母さん、今日は晴れていますから日傘をさせますよ」


母の看病をするにあたり、自分の仕事がままならなくなった ただ生活するには十分な金はある むしろ働かなくてもいいほどに
広い玄関口に置いてある傘の中に一つだけ
白い傘があった
しかしここ数ヶ月は使っていない

「あなた...誰でしたっけ...」


医師には痴呆症と言われた
もう私のことも覚えていない

「...まさ...ゆき...正幸!助けてぇ!知らない男がいるよぉ」

何度も何度も自分の名前を口にしてもその頭にはもう顔というものは忘れているのだろう


以前亡くなった父が書いた小説を読んだ
その中に初めて見るような熟語があったのだ


"乳母日傘"


小説は私がまだ産まれたばかりの頃に出版された本だ

大切に子供を育てる
乳母に日傘に
子供を大切に...

確かに母はいつもさした日傘を私の方へと傾けていた

父が母に向けて書いた小説なのだろう







こんなこと今更思い出してどうする
あと数分もしたらこの洞窟は崩れ落ちる
この日傘は...母のだ
そんな母を私は首に手をかけたのだ

「正幸助けてぇ!知らない男に殺される」

そう言ったって母は僕を覚えていない
ずっと看病なんかできない
もう嫌だった
ずっと面倒を見て
ずっと見張ってなきゃいけない


でも殺せなくて

なのにそこに鬼が来て僕の代わりに鬼が母を殺した







「正幸それは違います」


目の前には日傘をさした母がいた

「あなたは私を守ってくれたのです
私が殺されたあとも立ち向かって...
だけど鬼になってしまった いつも守ってくれましたね ありがとう正幸」


「母さん...私は疲れました」



「一緒に行きましょう」





鬼に殺される瞬間、母は前のように戻ったのか
私の目を見てありがとうと言ったのか
忘れていた
やっと死ねる
やっと母の元へ行ける





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