第8章 久しぶり
「私たちね、子供がいたんだけど小さい頃に人攫いにあってね...もしあの子がちゃんと生きていたらあんたぐらいだったんだよ」
明るくて優しくて優しすぎて溶けそうなほど明るい笑顔だった
悲しみはあっても、寂しさは感じられない
「たった一日だったけどねあんたといられて楽しかったよ」
「お前さんのおかげで俺たちゃ今日は幸せだったんだ
ありがとよ」
一緒に過ごしただけでも誰かの役に立ったんだ
なんだろう
溝内ら辺が暖かい
もう一度頭を下げて家をでようとすると呼び止められた
「忘れもんだよ
...はい、これ これはあんたが今日稼いだ分」
そのお金は野菜を店に届けた時にもらったお金全てだった
「いざってときのためにね」
「...ありがとうございます!」
これ以上この家にいると出られなくなりそうになる
懐かしさがあった
面をつけ髪を下ろす
今日は晴れた三日月だ