第8章 久しぶり
「すいません、お邪魔します...」
面を外し、簪で髪を結い上げる
貧乏でもなく、金持ちの家でもないが感じる空気は暖かい
「あんた、おかえりなさい。おや、見ない顔だね
とりあえずご飯食べるかい?」
お湯が湧く音、野菜を刻む音、虫がなく音
騒がしく三人だけとは思えない賑やかさだった
「ここらは最近化け物が出てくるんだよ
良かったねお前さん、旦那が連れてきてくれたからここで一夜を過ごすといいよ」
「綺麗な姉ちゃんやガキンチョが毎晩いなくなるんでぇこっちは困ったもんよ。お前さんはダメだが、かみさんだったら化け物も見向きもしねぇよ」
「なんだってぇあんた!」
笑いが耐えない仲睦まじい?夫婦だ
化け物は鬼のことだと思う
話を聞いていると鬼が出始めたのは2週間前
もうちょっと先に行った店の子供が拐われ、次の夜には十七になる女の人、次は子供というように毎晩交互に人がいなくなるようだ
ならば今日は女の日か...
もし上手く行けば囮になって倒せるかもしれない
時刻は子の刻(0時)を過ぎていた
隣の部屋に寝ている二人を起こさないように家を出る
羽織は隊服だとわかってしまうため、鞘と一緒に置かせてもらった
羽織がないと結構寒い
震える手を抑えるように深呼吸した
鬼がいる