第15章 愛とは その二
「なぁ…、何で扉間の術を解いたんだ?オレが言うのも変だが…。お前にとって扉間はイズナの仇でもあり、名無しを傷付けた張本人だろう」
「…何だ。気付いてたのか」
酒を飲んでいる間、扉間の様子を気付かれぬ様にずっと観察していた。
敵として対峙していた時以外の姿を見るのは初めてだし、同じ空間に居る事自体が初めてだった。
扉間がどんな忍なのかは知っているが、どんな人間なのかは知らない。
名無しがイズナの仇と知りながらも自分と一族を欺いてまで守ろうとした存在。
扉間の何が名無しにそうさせたのか。
それが知りたかった。
「…名無しはイズナが死んでから憎しみの感情を抑え殺す事を覚えた。憎しみだけじゃない。それ以外の感情も同じ様に表に出さなくなった。そして、それぐらいの時期から死に行く様な戦い方をする様になり、まるで死に場所を探している様だった」
感情を抑え殺す様になってから名無しはほとんど笑わなくなった。
まるで人形の様に戦いの最中でも表情を崩す事は無かった。
だから、あんなにも涙を流す名無しを見て、その時はどうして泣いているのか分からなかった。
まさか、その涙の理由が扉間だったとは夢にも思わなかったが。
「そう言えばお前、本当は俺に名無しと扉間の関係を話すつもりなんか無かったろ」