第15章 愛とは その二
そう、兄者だけは全てを知っていた。
知っていたからこそ、あの時、あんなにも自分を咎めたのだ。
恐らく何かの拍子にマダラに話してしまったのだろう。
そして、何がきっかけかは分からないが、名無しより強い瞳術を持つマダラがその術を解いた。
自分に名無しの存在を思い出させる為に。
「…術を解かれた後にお前の事を思い出したら今まで感じていた虚無感の理由がやっと分かった。長く続いた戦いが終わり、ようやく平和が訪れた。それなのにずっと心は何も満たされないし何も感じない。ただ虚無感だけがずっとあった」
「………」
「何かが足りない。でも、その「何か」が一体何なのか、ずっと分からぬままだった」
手首を掴んでいる手に少しだけ力が込められる。
虚無がどれ程人の心に影響を与えるか自身も身を持って感じたからこそ、その気持ちは痛い程によく分かる。
そして、それが少しずつ心を蝕んでいくという事も知っている。
扉間の顔を見る事が出来なかった。
痛いぐらいに感じる視線と手首の感覚から今すぐにでも逃げ出したい気分だった。
それでも、俯いたまま謝罪の言葉を掛ける事しか今の自分には出来なかった。