第14章 愛とは
波風立てず、何事も無く回りとの均衡を保ちながら物事を進めて行く。
それがマダラの側近としての自分の役目。
私情を挟む事は決して許されない。
「待て。まだワシの話は終わっとらん」
「…まだ何かご用ですか?」
そのまま歩を進めれば、今度は手首を掴まれ引き止められる。
急に掴まれたからか、驚いてしまい身体がびくりと小さく跳ねる。
振り解こうと力を入れるが、そう簡単に離す気は無いのか思いのほか力強く握られていた。
そんな扉間の態度に少しずつ苛立つのを感じる。
そのせいか口調も段々と端的なものになってしまい声色もつい少しだけ低くなってしまった。
言い終わった後にはまずいと思ったが、今更もう遅い。
「そろそろ、その口調を止めたらどうだ」
「何の事でしょう?」
マダラ達との会話でも聞かれていたのだろうか。
今の自分の口調が偽物だと確信した様な言葉に少しだけ顔を歪める。
どうやらもう不機嫌さを隠すつもりはないのか、眉間にしわを寄せ睨む様にこちらを見つめる扉間の視線があった。
何がそんなにも気にくわないのか。
少しだけ睨むようにそう言えば、一度瞳を閉じ、またこちらを真っ直ぐに見つめられた。
その瞳はあまりにも真剣で、今までのものと違う事にはすぐに気付いた。
「…ワシがいつまでも忘れていると思うな」
その言葉に一瞬で心臓を鷲掴みにされる様な感覚を覚えた。