第14章 愛とは
真っ暗と静まり返った屋敷の中を音を立てずに歩く。
日付が変わってからもう随分と時間が経った。
気配を消し部屋の様子を見に行けば各々部屋へと戻ったのか、そこには誰一人居なかった。
確認を終え一安心した後、そのままかつての裏庭へと足を運びゆっくりと腰を下ろす。
もう二度と見る事は無いと思っていたここからの景色に口元が緩む。
この場所は好きだ。
小さな空間の中にまるで自分だけの世界がある様なそんな気がする。
明るい時は美しく手入れされた庭を見る事が出来るし、暗くなれば満天の星空をゆっくりと眺める事が出来る。
「あ、流れ星…」
星空を眺めていたら一筋の線が空を切る様に流れていった。
幼い頃、イズナとマダラの三人でこうやって星空を眺めた事を思い出す。
三人でよく縁側で横になって流れ星を探した。
だけど、いつまで経っても見られず飽きてしまったマダラが先に部屋へと戻った後もイズナと二人でずっと探していた。
それから少しして一筋の線が見えた時は二人で無邪気に喜んだ事を覚えている。
その時にイズナと初めての「約束」をした。
『兄さんには内緒ね。俺と名無しの二人だけの秘密』
今でもその約束はずっと続いている。
無邪気だったあの頃の自分が懐かしく感じ、少しだけくすぐったい。
イズナが死んでからこうやって昔を思い出し、懐かしめる様になったのは柱間のお陰なのかもしれない。
柱間の強い思いがマダラの手を引き、深い闇から救い出してくれた。
それが結果として平和への道へと繋がった。
過去に生きるのではなく、これからの未来を生きなければいけない。
そう自分の中で思える様になった。
思う事で自分が強くなったのかは分からない。
それでも、先には進める。
今の自分にはそれが一番大切な事だから。