第14章 愛とは
お酒が進んで来た頃を見計らい、静かに外へと出る。
マダラと柱間の会話で最近はあまり屋敷に立ち寄らないと言っていたから安心していた。
だから、まさか会うとは思わなかった。
油断していた。
その言葉が今の自分には一番合う。
用意されていた布団に横になりながら今更ながらに後悔する。
自分か扉間にか、はたまたそれ以外に対してなのか、もう何度目か分らぬ溜息が漏れる。
「…帰りたい」
折角の酔いも一気に醒めてしまった。
あの時、自分はここで死ぬのだと思った。
マダラの声がどこか遠くで聞こえる様なそんな感覚がした。
身体から血がどんどん流れて行き、意識が少しずつ薄れて行くのを感じた。
敵として戦う事を覚悟して今まで戦っていたつもりだった筈なのに、いざその時が来て「最期」を実感してしまったら、少しだけ後悔の気持ちが生まれた。
今まで心を無にして戦って来たつもりだった。
それでも結局は忘れたふりをしていただけで何も変わっていなかった。
惹かれる気持ちはいつしか好意に変わっていった。
だから最後の最後で「もう会えない」と思ってしまい、涙が溢れて止まらなかった。
そして次に目が覚めた時、はっきりと自分の中にある想いを認めた。
自分は扉間の事を愛していたのだと。
だからこそ会わないと決めた。
愛は人を最も弱くする。
それは身を以って体験した自分自身が一番良く分かっている。
自分はイズナに愛されて愛する事で多くの事を知り学んだ。
だが、一度愛を知ってしまえばどんどん欲張りになってしまう。
近くに居れば居る程、触れたくてずっと傍に居たい。
そんな風に思ってしまう。
だから、会いたくなかった。