第13章 いつか見た夢
「また、いらして下さいね」
仲間と酒を飲み、そこで誘われた女の元で一夜を過ごした。
まだ完全に陽が昇り切っていない道をただ真っ直ぐ歩く。
忍最強と言われた千手とうちはが手を組み、戦争は瞬く間に終わった。
もう互いが殺し合う事も子供達が死ぬ事も無くなった。
ようやく皆が待ち望んだ「平和」が訪れた。
それなのに不思議と心はまだ戦いからは離れていなかった。
戦いたい訳ではない。
それなのに何故かあの頃が酷く懐かしく感じて、今もよくその時の夢を見る。
「虚無感」
この言葉が今の自分に一番合っている。
酒を飲み美味い物を食べようと、女を抱こうとも心は何も感じない。
ただ、そこに在るだけ。
何をしようとも心が満たされる事がない。
何かが足りない。
でも、その「何か」が一体何なのかは分からなかった。