第13章 いつか見た夢
「調子はどうだ」
「ん?もう…、マダラは心配し過ぎだよ」
背後から聞き慣れた声がし、動かしていた手を止めそちらの方へと振り向く。
その言葉に呆れ気味にそう返せば、無理はするなよと言いながら頭を撫でられた。
最近のマダラは雰囲気も変わり以前より穏やかになった。
昔の優しかった頃のマダラに戻ったような気がしてそれがとても嬉しかった。
今日は柱間の所へ行くと言っており、てっきり二人で酒でも飲んで来るだろうと思っており、こんな時間に屋敷に戻って来るとは思わなかった。
最近は週に一、二度は会っている様で、まるで昔を懐かしむ様にも感じられた。
「随分と早かったね。今日は飲んで来なかったの?」
「今日は話をしに行っただけだ。そう毎回飲んでたら何も出来んからな。それと、柱間が今度はお前も連れて来いと言っていたぞ」
「…でも、最近は忙しいから難しいかも」
あの時から柱間達とは会っていない。
怪我をしていたという理由もそうだが、正直なところ会いたくは無かった。
柱間の事だ。
会えば何を言われるかぐらい容易に見当が付く。
それが嫌なのだ。
ミトさんには勿論今すぐにでも会いに行きたい。
それでも、心のどこかで「行ってはいけない」という思いが引っ掛かり踏み止まってしまう。
会えばきっとその状況に甘えてしまう。
だから会いには行けなかった。
マダラの側近という立場上、どうしてもマダラの付き人として付いて行かなければならない時が来るまでは極力接触は避けたかった。
しかし、そんな考えもマダラの言葉によりあっという間に崩れ去る。
「そう言えば近々里作りの方針を決めるとか言っていたな。他族の者達も出席するだろうからな。面倒だが俺もうちはの長として出席しろと言われるだろう。今は時間が無くともその時はお前にも出席してもらうぞ。また近い内に柱間から詳しい連絡が来る筈だ」
そんな重要な事をさらりと言うものだから少しだけ動揺する。
その言葉に短く返事を返したら、こちらをじっと見つめるマダラの視線に気付く。
他に何か用事でもあるのだろうかとそう声を掛ければ、何でもないと一言言い残し部屋を出て行った。
里作りの方針を決めるという事はこれから本格的に里作りが始まる。
ようやく長い間待ち望んでいた平和への第一歩が始まる。
そう思うとつい最近まで続いていた血生臭い戦いが嘘の様に感じた。
