第12章 罪の代償
何故、兄者があんなにも取り乱したのか理由は分かっている。
自分もまさか女の忍が居るとは思ってもいなかったし、それが仮面の正体だったとは夢にも思わなかった。
「女」を斬った事に対する罪悪感は確かにあるが、戦場に立つ以上は命の奪い合いを覚悟している筈。
ならば男であろうと女であろうとも関係ない。
殺さなければ、殺される。
敵同士として対立する以上、それが普通だ。
兄者は甘い。
女だろうとも一度、武器を持ち戦えば敵。
しかも自分と同等に渡り合える程の力を持つ者に対して情けを掛けるなど言語道断。
あってはならない事だ。
そんな事で千手一族の長がいちいち狼狽えていたら、他の者達に示しが付かない。
長と言う立場にある以上、何事にも毅然な態度を失う事は許されない。
それが「長」というものだ。
***
名無しが扉間に斬られてからマダラとは戦場で会っていない。
それが何を意味するのか分からないからこそ、気掛かりで仕方が無かった。
あの時、名無しは扉間に食って掛かる自分の言葉を遮ってまで制止した。
そうしなければ恐らく自分は名無しの最も知られたくない事実を口走ってしまうところだった。
名無しはいつか殺される事を覚悟し、今まで戦場に立っていた。
その思いを自分の一言で無にしてしまう所だったと思うと、そんな自分の浅はかさに強く後悔の念が押し寄せる。
名無しが斬られた時のマダラの様子は、イズナが斬られた時のものと同じだった。
二人の様子を見ていれば、マダラが名無しの事を大切に思っている事はすぐに分かる。
そんな名無しを傷付けられて黙っている筈が無い。
「…名無し。今どうしている?生きているのか…?」
自分の大切に想う者と殺し合いの場に臨まなくてはいけないこの世の中をこれ程恨んだ事は無い。
マダラにも会えない以上、その様子を知る事も出来ない。
やり切れない思いを抱えたまま、時間だけがただ刻々と無情に過ぎて行った。