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【NARUTO】千手扉間

第12章 罪の代償


止血剤と増血剤を飲ませたが、それでも血を流し過ぎたせいでうちはの屋敷に着いた頃には既に名無しの意識は朦朧としていた。
それでも小さく聞こえる呼吸だけがこの世界と名無しとを繋ぐ命綱の様にも感じた。

手に感じる生温かい血の感触がずっと離れない。
治療を受けている名無しの傍らでその様子をただじっと見つめる。
傷は思っていた以上に深く、術で血を止め傷口をなんとか塞いたが油断は許されない状態だった。

「どうにか止血はしましたが、血を流し過ぎており臓器の機能が低下している状態です。増血剤を投与しましたがこればかりは我々にはどうする事も出来ません。後は名無し様の治癒力に賭けるしかありません…」

「そうか…、後は俺が看る。お前はもう下がっていい」

血が足りていないのか、白い肌が更に青白く感じる。

普段から身軽さを生かした戦い方をするからか防具も自分達が身に付けている様な物ではなく、機動力を重視した身軽な物を装備していた。
しかし、機動力は向上する反面、防御力は自分達の半分程しかない。
そのせいか傷を受ければ今回の様に命に関わる場合もある。
今までにも何度か大きな傷を受ける事はあったが、それでも命にまで関わる様な傷は今回が初めてだった。

細い女の体に似付かぬ数多くの傷。
顔は面を付けているからか傷が無い分、余計にそれ以外の傷が目立つ。
今は少し落ち着き眠ってはいるが、相変わらず呼吸は浅いままだった。

「…お前はいつも何も言わずに一人で全部抱え込む。俺にはお前が涙を流した理由さえ分からん」

治療をしている間も瞳は虚ろで、ただ涙だけが止まる事無く流れていた。
名無しの涙を見たのはイズナが死んだ時以来だった。

あの頃の名無しは一人にはしていられない程に精神的にも弱りきっており、常に誰かが傍に居た。
復讐もイズナの想いを汲み取りどうにか思い留まったが、それが皮肉な事に名無しの精神的な負担になってしまった。

イズナの死をきっかけに名無しの自身に対する執着心が薄れて行ったのは薄々感じていた。
以前にも増して前線に出て戦う様になったり、危険を顧みない戦い方をする様になった。
それはまるで自分の死ねる場所を探している様にも見えた。
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