第11章 対なる存在
掌に伝わる感覚と近くに感じる痛みを耐える様な声。
持っていた小太刀は無機質な音を立ててその場に落ち、少しずつ身体を伝い滴る血が水溜りに広がって行く。
咄嗟に雷遁を流し込まれて刀の軌道をずらされたが、それでも致命傷には変わらない。
既に黒炎は消え去り、肌に感じていた雷遁も次第に弱まっていった。
「ぐっ…」
「最後に気を抜いたな。ワシの勝ちだ」
素早く刀を引き抜けば、傷口を押さえながらその場に膝を付く。
手は次第に血で真っ赤に染まり、俯いたと同時に付けていた仮面がゆっくりと地面に落ちる。
このまま放っておけば確実に命はないだろう。
だが、念には念を。
そのまま刀を振り上げれば遠くからマダラと兄者の声が聞こえ、動きが一瞬止まる。
声のした方へと視線を向ければ、こちらへ向かって来るマダラに気付き、瞬時に間合いを取る。
その時に初めて気付いた。
今まで自分が戦っていた人物の正体が「女」であったという事に。