第11章 対なる存在
(幻術か…)
自身を包む気配も光も無い漆黒の闇。
チャクラを感知する事は出来るが、はっきりとした扉間の位置は分からない。
万華鏡写輪眼を封じたつもりだろうが、甘い。
チャクラの流れを見抜く眼にはこんな幻術など意味を為さない。
ましてや扉間の術はどれも規模が大きく、いくら位置が分からずとも術を放てばだいたいの位置は掴めるし、近距離戦になればチャクラの流れで位置などすぐに分かる。
大方、大技で陽動をかけ、その隙を突き接近戦に持ち込むつもりなのだろうが、そう簡単には行かせない。
「…炎遁、加具土命」
自身の周りを黒炎で纏う様に盾を作る。
これが自分の瞳に宿った万華鏡写輪眼の力。
全てを焼き尽くすまで消える事のない黒炎を操る事が出来る。
天照よりも眼への負担が少ない代わりに扱いは難しいが、チャクラの消費量は比較的少ない。
それでも使い続ければそれなりに負担は掛かる。
天照と加具土命を開眼したした時に自身にもマダラと同じ様に須佐能乎を扱う事が出来る力が宿ったが、チャクラを膨大に消費する上、身体全身の細胞に対する負担があまりにも大き過ぎる為、マダラの様に頻繁に扱えるものではなかった。
身体に走る痛みを感じる度にあれ程の須佐能乎を扱う事の出来るマダラの強さを改めて思い知らされる。
(チャクラをこれ以上消費する訳にはいかない。大技を使わせ、チャクラを消費させるしかないな…)
加具土命の黒炎は火を焼く炎。
ただの火遁とは訳が違う。
並大抵の水遁ではこの黒炎を消す事は不可能だ。
この黒炎を消さない限り接近戦に持ち込む事も自分に指一本触れる事も出来はしない。
マダラ達の戦いが終わるまでならチャクラ量も問題ない。
案の定、それから少しして轟音と共に大量の水がこちらに向かって物凄い早さで襲い掛かって来た。
しかし、この程度の術では黒炎を消し去る事など出来ない事は扉間も分かっている筈。
何を考えているのかは分からないが、今は相手の出方を待つしかない。