第10章 覚悟
「もう、あの頃には戻れないのか?扉間の記憶を元に戻すつもりはないのか…?」
「…もし記憶を戻したらどうなるかぐらい分かるだろ?対峙した時、いくら私がうちはの忍だろうと扉間は手加減する。意識的にはせずとも必ずそうなる。そしてその隙を写輪眼は決して見逃さない。…私はもう自分の目の前で大切に思う人が死ぬのは見たくない」
「例えそれで自らの命が朽ち様とも、か…」
迷わずそう答える名無しの瞳は、まるでもういつか来る死を覚悟しているかの様にも見えた。
そんな姿にただ溜息しか出て来なかった。
今はまだ万華鏡写輪眼の瞳術と観察眼でどうにか致命傷は避けているものの、いつ最悪の事態になってもおかしくは無かった。
それでも自分が何かを言った所で名無しの決意が変わらない事ぐらい分かっていた。
「引き止めて悪かったな。何かミトに伝える事はあるか?」
「…もし戦争が終わったら今度は一緒に街に行きましょうって伝えて」
そう問えば、少し何かを考えた後に悲しそうに微笑みながらそう一言言い残し去って行く名無しの後姿をただじっと見つめる。
こんなにも純粋に想い続けている名無しを死なせたく無い。
その思いは千手とうちはの共存を望む自分にとってより一層その望みを強くさせるものだった。
マダラとかつて見た夢を実現させる為、そして名無しを救う為にこの戦争を終わらせる。
そして、いつの日にか名無しがミトとの約束を果たせる様に。
この戦争を終わらせる。
拳を握る手に力を込め再びそう誓う。