第10章 覚悟
「ここなら、少しぐらいは話が出来るだろ?」
「………」
敵が居ないか近くを見回りに行っていた時に偶然柱間に見つかり、逃げようとしたが、四方を木遁で囲まれ呆気なく捕まった。
木遁とは随分と便利なもので、どこに居ようとも必ず狙った獲物は生命溢れる木々達によっていとも簡単に捕らえられる。
今、この場には自分達以外の忍は誰も居ない。
だからこんな風に話し掛けて来たのだろう。
柱間のそんな様子に仕方なく仮面を外し、小さく溜息を吐く。
柱間は自分が思っていた以上に鋭く聡い男だった。
自分が何故、扉間に術を掛けたのかも気付いているからこそ、戦いの場では決して扉間やマダラを含め両一族が訝しむ様な行動は取らなかった。
「こうやって話すのはいつ振りだろうな。元気にはやっている様だが…、いつまでもあんな戦い方を続けていたら死ぬぞ…」
柱間の核心を突く様なその言葉に何も返せず、ただ顔を伏せる事しか出来なかった。
自分のそんな様子を見てある程度予想はしていたのか、小さく溜息を吐く音が聞こえた。
どうして自分がこんな事をするのか。
それを分かっているからこそ、敢えて言葉に出しもう一度考えさせる。
結局、いくら時が過ぎようともあの時から何も変わらない。
その姿を見てしまえば消そうと思っていた想いが蘇り、まるで呪いの様に心を深く縛り付ける。
柱間の言うとおり自分はいつか扉間に殺される。
それでも誰かを再び失う絶望や悲しみに比べればその時の痛みなど何ともない。
自分の事を愛して欲しいとは思わないし、それを願う事なんてしない。
ただ、全てを忘れたまま生きて欲しかった。