第9章 想いとの決別
そう言われ、とりあえず渡された丸薬を大人しく飲み込む。
飲み込んだ後しばらくしてすぐに身体の痛みは治まり、チャクラが身体中を巡る感覚が走る。
普段自分達が使っている丸薬よりも格段にチャクラの回復量も多く、傷の痛みも殆ど感じない程になっていた。
それ程にこの丸薬の効果は他の物とは比べ物にならない程だった。
千手にはこれ程の物はなく、兄者がミトに渡したとは考え難い。
となれば、うずまき一族の物なのだろうか。
そう疑問に思った事をそのまま口にすれば、少し考える様な顔をした後すぐに真剣な顔付きへと変わったミトの顔をじっと見つめる。
「…これは名無しがあなた方の元へと向かう直前に私に預けた丸薬です。あなたが起きた後に飲ませるようにと言われました」
「名無し?姉上、一体誰の事を言っている?ここにはワシ等以外は誰もおらんぞ」
「扉間…?何を言っているのですか…?」
扉間のその言葉に一瞬、言葉を失う。
真っ直ぐこちらを見つめる瞳は相変わらずいつものもので、それが本心からの言葉と言う事が分かる。
自分が千手へと嫁ぐ以前からうずまき一族は千手一族と深い関係にあった。
そして、柱間と許嫁の約束を結ぶ以前からこの兄弟の事は良く知っていた。
それ故に、二人の性格も昔から良く知っている。
扉間はあまり冗談を好まない男だ。
ましてや、こういった場面では絶対に有り得ない。
だから、余計に扉間のその言葉に言い知れぬ不安を覚えた。