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【NARUTO】千手扉間

第2章 交換条件【*】


どれぐらいの時が経っただろうか。

瞳を閉じたまま一向にその場から動かない女を不審に思い、気配を消したまま背後から近付けば規則正しい寝息が聞こえて来た。
かなり長い時間修業をしていたのか随分と深く眠っており、起きる気配は感じられなかった。

「起きろ。こんな場所で寝ずに部屋へ戻れ」

いくら夏が近付き暖かくなって来たとしても、
朝晩の寒暖の差はまだある。
しかも、こんな風の通り易い場所でこのまま寝れば身体が冷え切り風邪を引くだろう。
そう声を掛ければ薄っすらと瞳が開き視線が重なる。
瞳があったまま上から見下ろす様な形で次の反応を待っていたが、いつもの様な反応は返って来ず、再び瞳はゆっくりと閉じられた。

そんな女の予想外な反応に一瞬どうしたら良いのか分からなくなる。
いつもなら、憎まれ口の一つや二つが普通だが、それもなく調子が狂う。
だからと言ってお互いどうする訳でもなく、無言のまま時間だけが静かに過ぎて行った。

それから少しして、静かな沈黙は女の透き通る様な声によって破られた。

「…ここに居ると、この世がまるで平和って錯覚する。本当は違うのに、まるで惑わされているみたい…。私は戦いの中で死ねるのであればそれも良いって思ってた。大切な人達をこの手で守れるのなら死ぬ事なんて怖くなかった。…でも、今はそれも叶わない。今の私は誰かを守って死ぬ事も出来ない」

ちらりと女の顔を盗み見すれば相変わらず視線は夜空へと向けられたままで、いつもの気丈な印象とは違い随分と儚く感じた。
口調もこれが本来のものなのかいつもより柔らかく感じる。
見下ろしながら話すのもどうかと思い女と少し離れた場所に腰を下ろす。

敵味方関係なく普通の人間であれば、戦いで死に直面したら、恐怖で己の精神を制御する事は難しくなる。
それは、訓練などでどうにかなるかもしれないが、そう簡単にはいかないのが普通だ。

「死」はその者の全ての終わりを意味する。
全ての恐怖を捨て、己の死を受け入れられるか否か。
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