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【NARUTO】千手扉間

第2章 交換条件【*】


あの戦いの後、何度か兄者に女の処遇について進言したが、考えは変わらず捕虜という形で今まで過ごしてきた。
その現状が女にとって酷く受け入れ難いものだった。
一人の忍として戦って来た自分を「女」だからという理由で殺さなかった自分達を恨んでいるのだろう。

「お前達は私をいつかの交渉の為に生かしていると言ったな。…私にそんな価値など無い。見当違いも甚だしい」

「………」

そう言い再び窓の外へと視線を移す女の顔は無表情だが少し憂いを帯びた悲しそうな表情にも見えた。
千手の敷地内から出られないこの女は知らないだろうが、今もうちは一族の者は捕虜として捕らえられているこの女を取り戻そうと戦いを挑んでくる。

この世界に価値のない人間など居ない。
例えそれが敵であろうとも、人は何かしらの意味を持って生れて来る。
その意味をどう考えるかで進むべき道が見えて来る。
だが、それを教えてやる程自分はお人好しではない。
誰かに教えて貰うのではなく自分で自分の価値を見出す事に意味があるのだから。

***

あれから女とは会っていない。
理由は簡単。
会う必要がないから。

今では一定の敷地内であれば自由に行動出来る様にはなった様だが、広い千手の屋敷の中ではそうそう会う事はない。
長の弟である以上やらなければいけない事も多く、戦いの合間に普段出来ない事を片付けている。

今日も例外ではなく、兄者の代理として猿飛一族との会合に参加してきたばかりだった。
夜空に広がる満天の星が煌き、疲れ切った頭が癒されて落ち着く。
そのまま足早に屋敷へと続く道を進む。

(随分と遅くなったな…。…?、何だ?)

屋敷に着き自室へと戻る途中、裏庭から風を素早く切る様な鋭い音が微かに聞こえ瞬時に気配を消し近付く。
こんな夜更けに何事かと思いその音の出所へと近付けば思ってもいなかった光景がそこにあった。

そこには普段の格好とは違い随分と動き易い身なりをした女が体術の一人組手をしている姿があった。
修業に集中しているのかこちらにはまだ気付いていない。

気配を消したまま女の様子を伺えば、疲れたのか縁側に仰向けになりながら夜空を眺めていた。
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