第9章 想いとの決別
「あの女は始末しなくてもいいのか?」
「私達の敵は千手。それ以外はどうでもいい」
そう端的に冷たく言い放てば更に鋭くなる扉間の視線。
久しぶりに肌に感じる殺気。
その感覚が少しだけ懐かしく感じる。
命を奪い合う感覚がまるで自分の身体の中にじわじわと侵食していく。
自分達はうちはと千手。
決して相容れる事など出来ない。
そう自分に言い聞かせ、全てを騙す。
「千手扉間、無様な姿になったものだな。お前がマダラに敵う筈もないだろ。尻尾を巻いてさっさと逃げれば良かったものを…。馬鹿な男」
「…今まで随分と猫を被っていた様だな。これがお前の本性という訳か」
「本性もなにもこれが私だ。お前達の長の様な甘ったれた考えなど決して持ちはしない。柱間の言っている事など下らない戯言に過ぎない」
自分のその言葉に満足したのか隣に立っていたマダラの口元は少しだけ弧を描いており、いつもより機嫌が良い事が分かる。
久しぶりに見るその顔が少しだけ懐かしかった。
それでもその瞳の奥は相変わらず冷たいままで日に日に憎悪が増している。
それが悲しかった。
イズナの望んだ平和とは最も遠い場所に居る、そんな風にも感じた。
そんなマダラをこの深い「闇」から救い出せるのはもう柱間しか居ないのかもしれない。
「話はここまでだ。死ね」
腰に差してある刀を引き、扉間に向けて構えるマダラの顔は相変わらず冷たいまま。
そろそろ頃合いかと思いマダラに声を掛ける。
自分を疑う様子は微塵もなく、ただ不思議そうにこちらを見つめる瞳と視線が重なる。
「…マダラ。この男をこんな所で殺すよりも最も効果的な場所…。柱間の目の前で殺してやればいい。そうしたら私達の痛みを少しは理解出来る様になる。それに、目の前で弟が殺されれば柱間だって休戦だなんて下らない事も言わなくなる」