第9章 想いとの決別
二人の元へと向かう途中、昨夜の事をぼんやりと思い出す。
あの兄弟は昔からマダラとイズナの事を知っている。
以前、マダラに関しての言い争いをした時に自分とイズナの関係に気付いたのだろう。
そうでなければあんな風に言う筈が無い。
そう思うと少しだけ溜息が漏れた。
初めて扉間に抱かれた時、そこに愛はなくとも優しかった。
だから、余計に昨夜の様子がいつもと違う事にはすぐに気付いた。
あの言葉に傷付いていないと言えば嘘になる。
だが、何より自分が一番嫌だったのはいつまで経っても扉間が本当に「自分」を見ない事だった。
(…馬鹿みたい)
自分でも本当に馬鹿げていると思う。
どうしてそんな風に思うのかなんて気付きたく無かった。
自分は今でもイズナの事を心から大切に想っている。
それは今も昔も変わらないし、きっとこれからもそう。
それでもその感情に似たものが少しずつ自分の中に芽生えていた。
だから、あんな風に抱かれたくなかった。
そう思ったら不思議と自分の中にある気持ちに気付いてしまった。
そんな嘘みたいな気持ち今すぐに消えてしまえばいいと思うのに、その気持ちはそう簡単には消えてはくれなかった。
何度も違うと自分に言い聞かせても、それは今も心に残ったまま留まり続けている。
***
「所詮、お前の力はこんなものか…。自分の無力さに打ち拉がれながら死ぬがいい」
「ぐっ…」
マダラに違和感を悟られぬ様、何食わぬ顔で二人の元へと歩み寄る。
そんな自分に気付いたのか、二人の視線が同時に自分に注がれる。
地に手を付き満身創痍な様子の扉間に少しだけ心臓が跳ねる。
それでも戦意は失っていないのか、未だ鋭い瞳を向けていた。
その様子に少しだけ安堵する自分はやはり扉間の事を好いているのかもしれない。