第7章 隠れた思い
「…?名無し、どこか調子でも悪いのですか?」
扉間とも話すし口数は普段と変わらないが、いつもより大人しい様子を不思議に思いそう声を掛ければ、名無しの視線が少しだけ揺らぐ。
その後に少しずつ自分が思っていた事を歩きながら話してくれた。
「どうして、捕虜の身である自分にここまでしてくれるのか?」
遠慮がちにそう話す名無しは本当にその答えが分からないのか、少し困った様な顔をしていた。
その姿を見て名無しには悪いなとは思ったが、少し笑ってしまった。
「簡単な事です。私は貴女を一人の人間として信頼しているし、妹の様に思っています。例え捕虜の身であろうとも、その者の人格や思考を縛る事は出来ません。この世は何も力だけが全てではありません。相手を信じる心を忘れてしまっては自分を信じて貰う事など出来ないでしょ?」
自分の思っている事を話し終わった後にはきょとんとした顔の名無しが目に入る。
その姿があまりにも可愛らしく、つい子供をあやす様に頭を撫でてしまった。
それが恥ずかしかったのか、俯きながら小さく「ありがとうございます」と言われた。
それから他愛のない会話をしながら道中を行けば、時間などあっという間に過ぎ気付けば既にうずまき一族の集落付近まで来ていた。
こうやって二人を見ていると以前と何ら変わらない。
普通に会話もするし、本当にいつも通り。
それでも、時折感じる寂しさは隠す事は出来ない。
二人の間に何があったのかを聞くつもりはないが、今回の旅で少しだけでも元の二人に戻ってくれればと切に願う。