第7章 隠れた思い
「ガハハハ!ミトよ、お前は少し勘違いしておるぞ。オレが心配なのは、いくら名無しが強かろうとも美しい女が二人で歩いておれば不届きな輩も出て来るだろうからな。それが心配なだけだ。それと、名無しの事は心配するな。オレは信じられる者を見極める目は良いからな」
そう笑顔で話す姿を見ているとこの方と一緒になって本当に良かったと心からそう思う。
名無しの事もただの杞憂に終わり安堵する。
しかし、仮に女二人で行きこの方に余計な心配を掛けてしまうのは忍びなく、そう考えると誰か他に頼れる人物に代理を頼むしか方法はなかった。
そして真っ先に自分の頭に思い浮かぶ人物は一人しか居ない。
「…扉間に同行して頂くのはどうでしょう?」
「うーむ…、お前も気付いておるだろうが、あの二人は…」
そう少し言葉を詰まらせる理由は分かっている。
しかし、このまま何もせずにお互いが距離を取り合い過ごしていたらいつまで経っても何も変わらない。
何かきっかけが無い限りあの二人は絶対に自ら行動を起こす事はない。
この行動がお節介だとは重々承知しているが、それでも二人の姿を見ていると心が痛む。
また以前の様な二人に戻ってくれたらどれ程幸せだろか。
「…あの二人は互いに気付いてはいませんが、少しずつ惹かれ合っています。でも、一族の名がある限り決して二人は己の気持ちには気付かないでしょう…。きっと気付こうともしない。私はこのままその想いが枯れてしまうのが悲しいのです」
「………」
そう、気付いていないのは本人達なのだ。
ミトは人の些細な行動や感情の変化にも良く気付く。
それは愛情であったり憎悪や妬みもそう。
だから、あの二人の身の内にある小さな想いにもすぐに気付いた。
自分自身、扉間の中に名無しの存在がある事には薄々気付いてはいたが、名無しに関してはミトに言われるまでは気付かなかった。
しかし、気付いた所でこればかりは第三者がどうこう言う様な問題ではない。
本人達が気付かない限り他人が教える事は絶対にしてはいけない。
自分達が出来るのは、ミトが言う様に何か「きっかけ」を作る事だけ。