第6章 それぞれの求めるもの
「…イズナ」
もし彼が生きていたら「今」はどうなっていただろう?
相変わらず戦いは続いているのか、それとも柱間の言う様に手を取り合い生きていただろうか。
もし、彼が生きていたら。
もし、扉間が私を殺していたら。
もし、自分が千手との共存を望んだら?
私がそう望んだらきっと柱間やミトさんは喜んでくれる。
だが、扉間は違う。
扉間がうちはとの共存を望んでいない事ぐらい考えなくても分かる。
そう考える方が普通であり、柱間の考えの方が普通ではないから。
そう思うと、少しだけ胸が痛んだ。
***
「はぁ…、お前はもう少し言葉を考えろ。あれでは名無しが怒るのも無理ないぞ」
「………」
多少、言い過ぎたとは思っているのだろうか、少しばつの悪そうな顔で外を眺めている。
自分自身もまさか名無しが泣くとは思っていなかったから驚いたが、自分以上に扉間の方が驚いているだろう。
それに、先程の様子を見る限りイズナこそ名無しが以前ミトと話をしていた時に言っていた「彼」なのだろう。
名無しが愛した者であり、今もその存在を忘れられず追い求めている。
だから、扉間の言葉にあんなにも声を荒立ててまで怒ったのだ。
名無しの愛した者がイズナである事を扉間は知らない。
もし、知っていれば今までこんな風に過ごす事など出来なかっただろう。
扉間と名無しの関係も出会った当初の頃より少しずつではあるが良くなって来ている。
以前はお互い名前すら呼ばなかったのに、今ではそれぞれの名を呼び合い話す様にもなった。