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【NARUTO】千手扉間

第4章 夢の中に生きる者


夢を見た。
彼がまだ生きていた頃の夢。
二人とも笑っていてとても幸せだった。
戦いに身を投じる自分をとても心配し、いつも共に戦い守ってくれた。
とても暖かくて優しい人だった。

あの時の自分は忍であり、女でもあった。
「女だけど私も、…を守りたい」って言った時の彼の顔は今でも忘れられない。
嬉しそうに微笑んで抱き締めてくれたけど「名無しは女の子だから、俺が名無しを守るよ」そう言ってくれた。
その言葉が恥ずかしくて素直に頷く事は出来なかったけれど、それでもとても嬉しかった。

(…夢)

彼の夢はもう長い間見ていなかった。
そのまま瞳を閉じれば、溢れんばかりの涙が頬を伝い落ちて行く。
横になりながらぼんやりと天井を見つめれば、今でもはっきりと思い出される顔。
色々な表情の中でも笑っている時の顔が一番好きだった。
どんなに時が過ぎようとも、あの頃の思い出は色褪せる事無く記憶の奥底にずっと残ったまま。

彼が死んでしまった後、自分は女を捨てた。
誰かを守るという名目の下で自分が死ねる場所をいつも探していた。
愛していた人を失う事の辛さがこんなにも耐え難いものだと嫌という程味わった。

自分が物心付いた頃には既に親兄弟は他族によって殺され、心から大切に想う人は誰一人として居なかった。
そんな中で彼に出会い、愛を知り愛を大切に想う事を教わった。
そして、目の前で愛を失う事の絶望も教わった。
自分の眼に宿るこの力がその証。

「   」

彼の名前を声に出したら、きっとまた立ち直れなくなる。
それが怖くて口にする事が出来ない臆病な自分が嫌になる。
この眼に宿る万華鏡写輪眼の力。
もしこの瞳術を使ってしまったら、自分と彼とを繋ぐ唯一の生きた証を消してしまいそうで怖くて仕方がなかった。

現実の世界に彼は居ない。
だから、あの頃の自分は夢ばかり追い続けていた。
瞳を閉じればいつもそこには彼が居たから。
でも、そうじゃないと気付いたのはいつだったか今ではもう思い出せない。
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