第3章 足下から鳥が立つ
「…お前は馬鹿か。こんな風に手当てもせぬまま直接傷に巻いたら菌が入って化膿するぞ」
下手くそに巻かれた包帯を全部取り、傷口を見る。
傷口は薄く紫に変色しており、すぐに毒だと気付く。
恐らく刀傷を受けた際に刀身に塗ってあった毒が体内に入ったのだろう。
傷付近からは少し熱を感じられ、まだ体内に毒が残留している事が分かる。
指先が少し痙攣している所を見る限り神経系の毒だろう。
チャクラを集め意識を集中させながら傷口に当て体内のチャクラの乱れを探す。
そのまま直接毒を体内から抽出し、毒抜きをする。
量もそれ程多くはなく、強い種類の毒ではなかったからか処置はすぐに終わった。
「毒は抜いたがまだ少し痺れが残る筈だ。今日は大人しくしている事だな。…何だその顔は」
「頭でも打ったのかと思ってな」
自分をじっと見つめる顔がやけに不思議そうにしているなと思いそう声を掛ければ、思っていた以上に失礼な言葉が返って来た。
世話になっている礼として助けたのに、まさかそう言われるとは思っておらず、もっと強力な毒でも盛ってやろうかと本気で考えてしまった。
いくら屈強な者でも内臓は鍛えられないし、殺すのならば毒が一番効率が良い。
「次は精々毒を盛られない様に気を付ける事だな」
「くく、恐ろしい女だ。…そういえば、さっき兄者がどうとか言っていたな…」
半分本気交じりにそう言えば少し愉快そうに笑った後にそう言われ、その言葉に何故この部屋に来たかと言う当初の目的を思い出す。
思い出してしまえばまた沸々と柱間に対する怒りが込み上げて来た。
そして、今日の事やここ最近の出来事を捲し立てるかの様に一気に話す。
柱間に対する不満や日頃の自分に対する目に余る行動の数々。
その全てを弟である扉間に文句として吐き出す。