第3章 足下から鳥が立つ
小腹が満たされて機嫌が良いのか床に大の字になって寝転んでいる柱間は性懲りもなく、またそんな事を言って来た。
どんなに嫌そうな顔で邪険に扱おうとも通用しない。
自分の納得出来る答えを得るまでとことん追い求める。
本当に嫌な性格をしていると思う。
「あいつもこうやってお前を腕に抱いたのだろう?」
「なっ…、離せっ!」
「ガハハハ!離せと言われて素直に離すオレではないぞ!」
手首を引っ張られ横になっている男の胸に上半身が倒れ込む様な形で捕らえられる。
この兄弟は人の話を聞かないし、何もかもが突然過ぎて頭が痛くなる。
どうせこの男も抵抗しようが離す気はないのだろう。
小さく溜息を吐けば、相変わらずの能天気な笑い声が聞こえてきた。
***
あれから、あのままの体勢かと言えばそうではない。
むしろもっと酷くなった。
今の状況は身体を起こし胡座をかいている上に座らせられ、背後から両腕を回されている。
何がそんなにも楽しいのか男の顔は緩みっぱなしで、これが一族を束ねる者かと疑問に思う程だ。
「…いつまでこうしているつもりだ?さっさと離せ」
「そうだなぁ…、名無しがオレに口付けしてくれたら離してもいいぞ?」
「断る」
はっきりとそう言えば少し何かを考える様に唸った後、何かしら閃いたのか少しだけ静かになった。
今まで騒がしかったが急に黙られるのも何かあるのではないと勘繰ってしまう。
そのまま警戒しつつ様子を伺えば、急に首筋に生暖かい感触を感じた。
それが何なのかなんて考えなくても分かる。
啄ばむ様な口付けやまるで味見をするみたいに舌を軽く這わせたりとやりたい放題だ。