第17章 愛とは その四【*】
「おぉ、そうだ!名無し。マダラから「酒が無くなるまでには戻れ」と伝言を受けたぞ」
「酒が無くなるまでには戻れ?…どういう事?」
重要な部分を端折った伝言を伝えられても意味が分からない。
酒が無くなるまでには戻れ?酒?
訳が分からないといった顔をしている自分の様子が面白かったのか、また愉快そうに笑う柱間。
それが何となく気にくわなくて脛を蹴ってやったら、ようやく話す気になったのか、未だにやけた顔で事の経緯を話し始めた。
「千手には昔から一部の者が酒を造っておってな。その酒をマダラが大層気に入ったみたいで、帰り際に持たせてやったのだ」
「それで?」
「本題はここからぞ。その酒は特別な技法で造られておるからか希少価値が高く、なんせ高いのだ。さすがのオレも長だからとはいえ無償で貰える訳ではないからな。仕方なく自腹を切ってマダラに持たせた。…ある条件付きでな」
最後の言葉を発した時の柱間の顔ときたら、にやりと効果音が付くのではないかと思う程、今までに見た事が無い様な顔をしていた。
一言で言えば、何かを企んでいる様な悪い顔。
初めて見る柱間のそんな顔に一瞬驚いてしまい、無意識に身構えてしまった。
扉間の方へと視線を向けても、その顔には特別驚いてはいないようだが、自分と同じ様に話の意図が読めないのか、ただ黙ったまま話を聞いていた。
そんな自分達の様子に満足したのか、またあの顔で話の続きを始めた。
「さっき「酒が無くなるまでには戻れ」とマダラからの伝言を伝えただろう。要は「酒が無くなるまでは休みをやる」という事だ」
「…どれだけ持たせたんだ?」
「一升瓶を二本持たせてやったぞ。それに、お前も昨夜だけじゃ物足りんだろう」
「当然だ」
そこまで話を聞けばおおよそ理解出来たのか、ようやく扉間が口を開いた。
自分達の関係もそうだが、昨夜の情事を隠す訳でもなくあっけらかんと話す扉間の言葉に顔に熱が集まるのを感じる。
マダラもマダラで自分達の事を分かっているからこそ酒で手を打ったのだろう。
これではまるで酒で売られた気分だ。
柱間いわく、強い酒だしマダラの酒量から見ても一ヶ月以上はゆうに持つだろうという事だった。
回りくどいマダラの気遣いに少しだけくすぐったさを感じるが、今はそれどころではない。