第17章 愛とは その四【*】
「お、ようやく起きて来たか」
「………」
廊下を歩いていたら庭で盆栽をいじっていた柱間に声を掛けられる。
柱間の「ようやく」という言葉が妙に引っ掛かる。
短く返事を返せば相変わらずの笑顔でこちらに歩いて来る様子が目に入る。
その姿はやけに楽しそうで、逆に少し不気味な程だ。
「うわっ、ちょ…っと!」
「ガハハハ!良いではないか!」
「良くないっ!」
目の前まで近寄って来たと思ったら、正面から勢い良く抱き締められた。
頭上から聞こえる声にそう返事を返しても一向に離す気は無いのか、ただ楽しそうな笑い声が聞こえるだけだった。
どうにか抜け出そうと考えていたら、ふと、目の前に見える部屋がマダラに用意された部屋だった事を思い出しその名前を呼ぶ。
しかし、部屋からは人が出て来る気配は無く、チャクラを練ってみてもマダラのチャクラはどこにも感じなかった。
「…?マダラは?」
不思議に思い柱間にそう問いかければ「もう、うちはに戻ったぞ」と言われた。
まさか自分を置いて先に戻るとは思っていなかったから、少しだけ素っ頓狂な声が出てしまった。
それから感じ慣れたチャクラが自分の背後から近付いて来る事に気付いたのはその後すぐだった。
「…兄者、そろそろ離せ」
「俺の楽しみを奪うとは、酷い弟ぞ」
扉間の言葉によりようやく柱間から解放される。
先に戻ったマダラの事を考えていたら、ふと、こちらを見つめる柱間の視線に気付く。
その瞳はさっき見た何かを楽しんでいる様な瞳と同じ種類の物で「にこにこしている」その言葉がぴったり当てはまる様な顔だった。
こんな顔で自分達を嬉しそうに見られていれば、嫌でもその笑顔の意味に気付く。
マダラが術を解いたのならば当然柱間もそれに気付く。
そして、自分達の関係が今までとは違うという事にも確実に気付いているのだろう。
この緩み切った顔が良い証拠だ。
チラリと扉間の方へと視線を向ければ、同じ様に思っているのか面倒臭そうな顔をしていた。