第17章 愛とは その四【*】
瞳を開ければ障子越しから入るぼんやりとした朝日が部屋の中を少しずつ明るくしていた。
背中越しに感じる体温と自分の身体に回されている腕が温かい。
結局、昨夜は用意された部屋に戻る事は無く、扉間の部屋で一夜を明かした。
ゆっくり背後へと視線を向ければ未だ気持ち良さそうに眠っている扉間の顔が目に入る。
その姿に自然と口元が綻ぶのを感じる。
元の体勢に戻り、自分の首の下から伸びる逞しい腕にそっと触れ、大きな掌に自分のものを絡ませる様に重ねる。
こんな風にゆっくりとした時間の中で気付く事はたくさんある。
いつもは冷たい身体も寝ている時はこんなにも温かくなる。
寝顔はまるで毒が抜かれた様な顔をしているし、気持ちよさそうに眠る姿は年齢よりも子供っぽく見える。
全部、今まで気付こうともしなかった事ばかり。
久しく感じていなかった愛し愛される感覚。
それがとても心地良くて落ち付く。
「…好き」
本人に言う訳でもなく、何もない空間に無意識に出てしまう言葉。
だけど言葉だけでは全然足りない。
そう思ってしまう自分はやはり欲張りな女だ。
腕に軽く口付けを落とせば、起きていたのか身体に回されている腕に力が入る。
そのまま背後から首元に顔を埋められ、強く抱き締められたかと思えばそれはまたすぐに変わった。
いつの間にか覆い被さる様な体勢に変わっており、唇から首や鎖骨、胸元にかけてゆっくりと口付けを落とされる。
「…朝からこれ以上襲われたくないなら、そう煽らない事だな」
それから少しして満足したのか、最後にもう一度唇に軽く触れる様な口付けをされた後にそう言う扉間の顔は少しだけ楽しそうにも見えた。