第17章 愛とは その四【*】
初めて聞いた名無しの気持ち。
本気の愛など自分には一生無縁なものだと思っていた。
千手には兄者が居るし、周りから嫁を取れと言われても興味など無く、どんなに美しく着飾った女を見ても心惹かれる事もなければ欲しいとも思わなかった。
誰かを愛する事など一度もなかった。
それがどうだ。
今の自分は忍の女、しかも、かつて最大の敵として対峙していた一族の女を愛した。
愛しその全てを求めた。
自分の気持ちを受け入れそれに応えた名無しがどうしようもなく愛おしい。
共に過ごした時間は短く、むしろ敵として戦って来た時間の方が長い自分達の関係は他人から見たら決して理解出来るものではないだろう。
それでも、自分達にはその時間さえも必要不可欠なものだった。
腕に抱き口付けを落としながら初めて感じるこの感覚を堪能する。
その後は、まるで今までの空白を埋めるかの様に互いを求め合った。