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【NARUTO】千手扉間

第16章 愛とは その三


臆病だという事は分っている。
それでも、もう二度とあんな思いはしたくない。
ならば扉間の言葉を受け入れてはいけない。

それが自分の答えだった。

「…私は、」

だが、自分の出した答えを伝えたいのに上手く言葉が出て来ない。
このままその言葉を受け入れたい気持ちとそれを拒絶したい気持ち。
その二つの想いが入り交ざり、どうしたら良いのか分らない。
真っ直ぐこちらを見つめる瞳は真剣でその言葉が心からのものだという事が痛い程に伝わってくる。

それでも、言わなければいけない。
さっきと同じ様にもう一度深く呼吸をし、ゆっくりと口を開く。

「…私はもう誰も愛したくない。それに私より良い人なんてたくさん居るし、私達は忍だ。だから、「ワシはお前を残しては死なん。だから、信じろ」

最後の言葉を言おうとした瞬間、遮る様に発せられた扉間の言葉に頭が真っ白になる。
「信じろ」
その言葉に言おうとしていた言葉もその想いも全部掻き消された様な気分だった。
そして、その後すぐに涙が頬を伝うのを感じた。

一度流れ始めた涙は拭っても拭っても止まる事なく流れ続け、気付けばまた抱き締められていた。
まるで今まで心の奥底に留まっていたものを洗い流すかの様に心の赴くままに泣いた。

こんな風に泣いて恥ずかしいとか、みっともないとかなんて考えられる余裕なんてない。
この涙が喜びから来るものなのか、それとも悲しみから来るものなのか。
今の自分にはそれすらも分からない。

ただ、自分の意思とは関係なく流れ続ける涙は止まる事はなかった。
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