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【NARUTO】千手扉間

第2章 交換条件【*】


別にふざけてなどいないし、冗談でこんな事をする程女に飢えている訳でもない。
そんな事をぼんやりと考えていたら、ふと、身体を押し返そうとする女の腕が微かに震えている事に気付く。

相変わらず口調は荒く鋭い瞳をしていたが、その瞳は薄っすらと涙で滲んだままだ。

「…お前自身が女に戻れぬと言うのならば、ワシが戻してやる。兄者はお前を殺すつもりはない。何でもすぐに死ぬ事を考えるな。生きたいと願え。それに…、兄者に抱かれるよりはワシの方がいいだろう」

「なっ…!やめ…っ」

そう言うなり、言葉を遮る様に再び唇を重ねれば、女の身体が小さく跳ねる。
未だ抵抗する手に指を絡めながら布団に押さえ付け、何度も角度を変えて柔らかな唇を味わう。

***

目の前の男は自分を抱くと言う。

こういう経験は無い訳ではないが、何もかもが突然過ぎて正直どうしたら良いのか分からない。
女の捕虜として千手に捕らえられた時は、何をされても仕方がないと覚悟を決めていたが、自分の予想に反し今までそういった事は無く随分と優遇されて過ごして来た。

自分は普通の女性みたいに家庭的でなければ優しくもない。
むしろ、普通の女性像とは真逆と言って良い程に違うだろう。

「兄者に抱かれるよりはワシの方がいいだろう」と言う言葉が頭の中をぐるぐる回って離れない。
もし、自分が選ぶ事の出来る選択肢がこの二つしかないと言うのならば確かにその通りだと思う。

何より自分はあの男、千手柱間が嫌いだ。
自分を「女だから」と言う馬鹿げた理由で殺さず捕虜として捕らえた事もそうだが、今までも度々、千手一族からは休戦そして同盟の申し立てを受けて来た。
そんな事が両一族の間で出来る訳がないと誰もが分かっている筈なのに止めようとはしなかった。

戦わずして大切な物を守る事など決して出来はしないのに、それをあの男は分かっていない。
マダラとは幼い頃からの顔見知りで唯一対等に戦える相手としての実力は認めるが、自分は千手柱間のそんな「甘さ」が気に食わなかった。

(…そう考えたら、まだこいつの方がましなのかもな)

自分を組み敷いているこの男の事を好きかと聞かれたら迷わず首を横に振るだろう。
それでも、千手柱間に比べれば話も通じるし合理的かつ現実的な考え方で理解はある。
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