第1章 序章
――…彼女は
俺とは、別世界の存在そのものだった
二年生に繰り上がり
シャッフルされたクラスへ向かい、また同じ一年を繰り返すんだろうと
分かりきったことを少し怖く思う自分がいた
窓際の席で、ただ下を見つめ、自分の世界に入る
クロが同じ学年なら―…
虎が、福永が、ここに居れば―…
頭を掠める願望に、視界が黒く遮られていく感覚がする
周囲の声が騒音と化す
耳を
塞ぎたくなる
『よろしくね』
はっと、その声に顔を上げる
俺の席の周りには、相変わらず人はいない
俺に掛けられた声じゃない
あまりに透き通る綺麗な声だったから
喧騒の中の鳥の声みたいな
また同じ声が聞こえて、今度こそその発生源の子を見れば、曇りのない顔で笑う君がいた
一方的にだけど、俺は彼女を知っていた
だって虎がうるさく言うから
同学年に天使みたいな子がいるんだって
誰にでも気さくで
優しくて
誰からも好かれる子が
まさか同じクラスだって、興味もなかったから名簿なんて見てもなかった
――…
話した事も、目を合わせた事もないけど
たぶんこの学校の人はほとんど
彼女のことを知っている
去年の学園祭がきっかけで