第2章 春の波
「…え」
先程とは別の、張り詰めた空気が肌を刺激する
『優しいからって、よく分からなくて』
彼女の瞳は真っ直ぐと、発言した子を射抜く
その女子生徒は「…あっ」とバツが悪そうに、どう弁明するのが正しいかと
瞳を泳がし模索する
『だって私は、優しいから研磨と話したいわけじゃないし。周囲にそう映ることもおかしいもの』
…そうだった、昨日知ったじゃん
彼女は意外と、怒ると怖いんだ
こんなに大勢に囲まれて、ハッキリと自分の意思を語る
「…いいよ」
おれが止めなきゃ、きっと彼女は収まらない
『……研磨…』
おれの平然とした顔を見たは、口を窄み、
クラスメイトの女子生徒へと、また視線の先を変える
怯える彼女にはいつもの優しい声音で
『ごめんね。私、言い方キツかったね…』
「う、ううん…!私が無神経だったから…っ」
女子生徒はおれに「ごめんね」としおらしく言い
またの方へと向き直る
タイミングよく教師が扉を開け入る
バラバラと席に戻り
おれももその波に従った
まさかあのが怒るなんて、おれも周りも、誰も予想してなかっただけに
異様な空気は、次の休み時間まで続いた
はきっと、自身のことには疎いけど
周囲の感情には敏感なんだ
だから、さっきおれが少し落ち込んだから
どうしても言わずにはいられなかったんだろうね
彼女を知る度に、なぜこんなにも周囲に好かれる人間なのかが分かっていく
それと同時に、やっぱりおれじゃ役者不足だと思い知らされる