第1章 序章
「迷惑じゃない」
はっきりと耳に届いた言葉は、想像していた彼の声よりもはるかに鋭かった
どきりと胸を打ち、孤爪くんの方を向くと
声より鋭い視線にまた胸が鳴る
『あ、り…がとう』
我ながら情けない声が出た
かあ、と赤く染まる頬と同時に
昼休みの終わりを告げる予鈴が体育館の向こうから聞こえる
「じゃあ」
彼は控えめに手をかざし去っていく
私は一人、取り残されて
未だぼうとする頭を自販機に傾けた
『…かっこい……?』
およそ彼に抱くと予想だにしていなかった感想が、意識の外からこぼれ出る
『うあああ…』
もたれ掛かり、ずるずるとしゃがみ込み
なんとも言い難い感情を押さえ込んだ
手に握り締めたココアが
その中心で身体を温める